(最終更新日:2023/10/01)
パニック障害の克服にビタミン、ミネラルは非常に重要です。ビタミン、ミネラルはGABAのような心を安定させリラックスさせる鎮静系脳内神経伝達物質の生成の補因子になるからです。
✅:今回は、パニック障害に特に効くビタミン、ミネラル(いわゆる栄養素)等のサプリメントについて、基礎的なモノをシンプルに解説していきます。
目次:
パニック障害の克服に効くビタミン、ミネラル(まとめ)
〇ビタミンB6(ピリドキシン)+亜鉛
ビタミンB6と亜鉛はGABAの生成に必要不可欠で、現代の食製品から欠乏しているビタミン、ミネラルの一種です。
パニック障害の人の脳では、GABAが確実に不足しています。
GABAが増加すると精神的にはリラックスし、身体的には筋肉がくつろぎます。
(ちなみに、ベンゾジアゼピン系抗不安薬はこのGABAを脳内で増やす作用機序を持つ薬です。)
ビタミンB6
ビタミンB6は脳内のGABA、セロトニン、ドーパミンを増加させることで知られる水溶性ビタミンの一種です。
脳内のビタミンB6濃度は血中濃度のそれよりも遥かに高いです。それはビタミンB6が心の安定に重要な神経伝達物質の合成補因子として機能しているためなのです。
パニック障害やうつの人などではビタミンB6の血中濃度が低下していることが知られていますが、この種の人ではGABA等の精神安定に関わる神経伝達物質が低下しているため、驚きに値しません。[1]
亜鉛
亜鉛は人体200種類以上の酵素反応の触媒として機能し、GABA合成の補因子として機能するミネラルです。
亜鉛不足になると知能の低下、認知機能の脆弱さ、感情コントロールの問題の発生、またはパニック障害の症状が発現しやすくなります。
亜鉛を増やすとノルアドレナリンやアドレナリンは減少していくので、パニック発作や予期不安も比例する形で改善されていきます。
パニック障害に限らずうつ傾向にある人は亜鉛が不足していることが知られています。[2]
亜鉛が最も多く存在するのはビタミンB6と同様に脳です。それだけ亜鉛は精神に多大な影響を及ぼすミネラルの一種だということなのです。
(↑この図で私が手書きしたZincとは亜鉛のことです。)
何故かというと、この両者はGABA生成における補因子となるからです。
グルタミン酸(原料)から
GABAを生成するのにビタミンB6と亜鉛が必要だということです。
ビタミンB6、亜鉛が生体内に十分に存在すると、GABAの原料であるグルタミン酸は無事、GABAへと効率よく変換されていきます。
↑サブチャンネルの方で解説しました。(メインチャンネルはシャドウバンされております)
基本的に、
だからこそ、
“GABA”を増やす“これらのビタミン、ミネラル”は極めて大切だというシンプルな話です。
サプリで摂取することが最も効率が良いのでおススメです。
〇鉄(フェロケル鉄)
フェロケル鉄は鉄剤の中でも最も吸収効率が高いサプリメントです。(ただし、リスクが高いので、中長期的摂取に関してはビスグリシン酸鉄のような非ヘム鉄を推奨します)
鉄が不足してもパニック障害が引き起こされることがあります。
鉄が不足すると、生体内のミトコンドリアの活性が落ち、ミトコンドリアの活性化は精神の鎮静あるいは抗ストレス作用を要することが近年の研究により、わかっています。
うつやパニック障害の人ではこのミトコンドリアの活性レベルが低下しています。
その活性レベルが上昇すると、これらの心の異常は解消されていきます。
(当ブログで紹介している運動にや少食法もミトコンドリア活性レベルを上昇させる効果があります)
特に生理のある女性のパニック障害の方の場合、鉄不足が頻繁に見られます。しかし貧血の女性にのみ推奨します。
⚠何故なら過剰な鉄は酸化ストレスを上昇させる危険因子のためでフェリチン25~30(ng/ml)を超えていれば十分なので減量したり中止した方が良いでしょう。
対して、男性の場合は亜鉛不足※です。
(※男性の鉄不足はまれ。)
なお、
パニック障害の女性は鉄だけではなく亜鉛も不足している傾向が非常に濃厚です。
亜鉛が最重要
亜鉛は極めて重要、否、精神を安定させるのに最重要のミネラルのひとつであるといっても過言ではありません。
亜鉛は生体内、数百種類以上の酵素反応の触媒として関与するのだから当然と言えば当然です。
〇マグネシウム
マグネシウムは脳神経の可塑性を高め、ATP(アデノシン三リン酸)の合成を高めます。要するに脳に非常に関わりの深いミネラルという事です。
また、マグネシウムはビタミンB6の代謝に必要不可欠(その逆も言えます)したがって、両者は併用した方が確実に良いのです。
マグネシウムは亜鉛に次いで現代人に不足しがちな必須ミネラルです。
それから、マグネシウムはビタミンDの吸収に密接に関与し、生体内に豊富なマグネシウムが存在していると、ビタミンDの吸収率が増強されます。
しかも、マグネシウムが事前に生体内に存在していないとカルシウムは吸収されなくなります。
(マグネシウムは非常に欠乏しやすいミネラルのため、サプリメントからの補強摂取を検討すると良いでしょう。)
〇ビタミンD
ビタミンDも大変に重要な脂溶性ビタミンの一種で、パニック障害、不安障害等の方では顕著に低下していることを示唆する研究が多々為されています。[4][5]
生体内のマグネシウムレベルが適正にあれば、ビタミンDレベルも一般に上昇する関係にあります。
ビタミンDレベルの上昇はストレス耐性能力の強化、認知機能増強作用を持つことも知られています。
日光を浴びるとビタミンDレベルは一般に上昇しますが、中には遺伝的に生成率が低い人もおります。
こういう人はライフセーバーのように1日中日光を浴びていても極度に低いビタミンDレベルを有します。
そのような人の場合、サプリメントの摂取を検討すると良いでしょう。
☆注意点がひとつ。
亜鉛とマグネシウムは競合関係にはなく、むしろ吸収率をお互いに増強する関係にありますので、一緒に摂取しても問題はありません。(むしろ好ましい)
サプリメント摂取のコツについて:
ですので、
効率よくミネラルをサプリメントから摂取するコツは、
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✅:朝にたとえば鉄サプリを飲み、
✅:夜に亜鉛サプリを飲むように、
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飲むタイミングを必ずズラすことです。
基本的にビタミン※に限っては、この限りではなく気にされないで構いません。
(※脂溶性ビタミンは除く)
また、鉄のサプリメントは飲むのであれば、ヘム鉄でもただの鉄でもなくフェロケル鉄のサプリメントにしましょう。
それから男性の場合、鉄は不要な場合が少なくなく、むしろ亜鉛の摂取を重視すべきです。
鉄よりも亜鉛の方が遥かに重要です。
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註1:また、ビタミンに限ってはまず問題はないですが、特にミネラルサプリメントは体に徐々に蓄積されていくものなので、メーカーの摂取推奨量、一日の推奨摂取回数を必ず守られるようにされてください。
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パニック障害ではGABA(ギャバ)が不足しているから、「だったら、GABAサプリを飲めばいいんだ!」と感じられる人が少なくないかと思いますが、GABAサプリは血液脳関門という脳の関所に存在するフィルターを、分子サイズが大きすぎるがため通過できません。
したがって、GABAサプリはパニック障害の克服におき、私は正直おススメはしません。
ただし、血液脳関門のサイズも個人差があり、中には吸収される人も存在します。(これは実は良いことではありませんが、長くなるので、説明は割愛します。)
まとめ
パニック障害に効くビタミン、ミネラル、いわゆるサプリメントの摂取はなるべくシンプルにするのがコツで、いろいろネット上に情報はあるかと思いますが、まずはここを押さえてください。
ですので、はじめのうちは、ビタミンB6と亜鉛だけでも構わないくらいです。
あとは、追加でマグネシウム程度で十分です。
また、色々なサプリメントを、あれこもこれも飲んでいると「何が効いているか」わからなくなります。
ですので、まずはこのシンプルな組み合わせをおさえてみてください。
それは、
ということなのです。
愚直に実践されれば確実にパニック障害は改善されていくはずです。
また、サプリメントだけでどうにかしようとするだけでなく、
✅:「運動の習慣をつける」
ということも非常に大切です。
というのも、例えば前者であれば、サプリメントからのビタミン、ミネラル等の栄養素の吸収率よりも食事からのそれの方が遥かに高いためです。
そこについては下記の記事に詳細がありますので、そちらを参照されてください。☟
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(主要参考文献:)
[1]:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23603926/
[2]:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20156515/
[3]:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11447329/
[4]:http://www.biomed.cas.cz/physiolres/pdf/64%20Suppl%202/64_S101.pdf
[5]:https://link.springer.com/article/10.1007/s11011-019-00486-1
(その他参考文献:)
・https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1471-4159.2011.07554.x
・https://journals.sagepub.com/doi/full/10.4137/NMI.S6349
・https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23567517
・https://academic.oup.com/jn/article/130/5/1344S/4686363
・https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23377209
・https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19085527