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強迫性障害は”甘え”や”わがまま”ではない !

強迫性障害は”甘え”や”わがまま”ではない

 


✅強迫性障害とは、一般の人が全く気にならないような些細なことを深刻な悩みとして捉え、苦しむ症状のこと
を言います。

よって、その性質上、
傍目には単に甘やかされて育ったダメ人間幼稚な人に見えることもあり、それが良からぬ誤解を産むことがままあります。

 

すなわち、
「強迫性障害に苦しむ人=甘えやわがままが強い人」
といったレトリックで、世間で良くある実情を知らない人々による、よくある典型的なレッテル貼りです。

確かに、強迫性障害で苦しむ方の中には、あくまでも非常に稀ではありますが、中には甘えの強い、自己本位の塊のような人間も存在するのは確かです。
(これは巻き込み型強迫性障害の方で比較的、極稀ではありますが散見されるように私経験より実感しています)

(関連記事:)
強迫性障害の種類(巻き込み型、自己完結型)

強迫性障害は甘やかしで発生するわがままな性格ではない

しかしながら、強迫性障害で悩む人のほとんど、いわゆるその超過半数は甘やかされて育ち、よって甘えが強い性格になったり、わがままになったりするわけでは概してありません。
(幣個人指導の指導経験から言えば、甘えやわがままの強い人(その成育歴も含む)は例外的と言えるほどの頻度です)

これは繰り返しとなりますが、

「一人っ子だから、強迫性障害になった」ですとか、
「甘やかされて育ったから自己中かつ強迫症になった」

などと勝手に第三者が決めつけてくるようなこの世の中で往々にして起きがちがなことなのです。

(物事を極度に単純化しがちな人間の悪習、性と呼べるでしょう。人はとかくわからないことに理由をつけたがる生き物です)

(関連記事:)
一人っ子の強迫性障害は深刻化しやすい【対策付き】

甘やかしは人をスポイルするとは限らない~これまでの定説の反証~

また、後述しますが

「一概に甘やかしが人間をダメにするかというとそういうわけではありません」

また、

逆に、
「極度に甘やかしを行わない早期自立型の教育を政府が奨励し各家庭で実践されることで、むしろ精神不安定な大人を大量増産してしまったという国[1]も存在するのです」


[1] イスラエルのキブツ(イスラエルに存在する独自の共同農場コミュニティのことを指し、誰でも参加可能)での子供への自立教育実験(子供を親の元ではなく、キブツコミュニティで育てる)で示唆されたことは、特定の自尊心の低い子供達はキブツコミュニティで生育することで大人になっても他人と親密な関係を築くことが困難になったり、他人に愛着を感じづらい人間になったりするという傾向があることであった。

話を元に戻します。

強迫性障害は性格の問題ではなく脳の問題と捉えることの重要さ

例えば、強迫性障害の症状で本格的に苦しんでいる人は

「風呂から3時間も4時間も出てこれなかったり、手がアカギレるほど洗浄を繰り返したり」しますが、

このような現象は根性がないから、甘やかされて育ったから執り行われるのでしょうか?

そのようなわけは決してありません。

強迫性障害はもはや常軌を逸する異常心理で甘やかしやわがままによるモノと断定できるモノでは断じてない

3時間も4時間も風呂に入ってから出てこれないのは常軌を逸した異常行動です。

極めて”病的なモノ”と言えます。

手が切れてくるほど洗浄を朝から晩まで繰り返す人も同じ話です。

 

例えば、忍耐深いと定評のある人に頼んで、「これら本格的な強迫性障害の方と同じ行動を同時間行って下さい」と頼んでも、その忍耐力の極度に高い人でさえも、その多くは途中でドロップアウトしてしまうことでしょう。

 

 

話を戻しますが、
こうした常軌を逸したレベルの強迫症状が発生する理由は”脳”にあります。

あまりに当たり前のことなので、多くの人はこの事実を忘れがちなのですが、人間の性格、行動というものは脳によって生み出された現象であるわけです。

お酒を飲んで暗い性格の人が明るくなったり、性格が豹変したりするのはアルコールが脳に運ばれ、脳の働きが変わったからです。

強迫性障害の人の脳は“強迫性障害脳”になっています。


すなわち、強迫性障害の人は些細なことに極めて強いこだわりを持ち、そのこだわりに異常と言えるほどまで日々の生活にて苦しめられていくという状態です。

こうした状態を、傍目では何も知らない第三者が見て、安直に強迫性障害は甘えやわがままの一種だと断定しているのが、実情であるわけです。

 

 

(関連記事:)
強迫性障害の人に行ってはいけない言葉【禁句】

健康な人を強迫性障害の状態に陥れる”物質”は存在する(=脳が性格を作っている)

しかし、


例えば、
✅強迫性障害ではない健康な人に強迫性障害脳を惹起する物質を摂取させれば強迫性障害がどのようなものであるか疑似体験することができます。(私はその種の強迫性障害脳を惹起する物質を存知あげております)

逆に、
✅強迫性障害の人に強迫性障害脳から脱却させる物質を摂取されば上の例とは全く真逆の状態を醸成することが可能になるわります。(同様に、私はその種の強迫性障害脳を消滅させる物質を存知あげております。)

 

要するに、
脳が性格(いわゆる心、行動様式)を産むわけです。

交通事故で脳を損傷し、性格が豹変する事例からもこのことは明白です。脳が人間の性格を産んでいるのです。

強迫性障害を甘え、わがままと断定する前に知るべきこと

 

✅ですから、強迫性障害は甘えやわがままな性格というわけではなく、それよりも強迫性障害の方はむしろ“強迫観念や強迫行為に極めて捕捉されやすい脳の状態になっている人”と形容した方が極めて適切な表現となります。

こうした事実を無視し、強迫性障害の人は甘やかされた人であり、かつわがままな成育歴を有する人と断定する世の見解は基本的には間違っています。

それは、あまりにも短絡的な発想です。

実際問題、強迫症状を持つ当事者を執拗に責めたところで何も変わりませんし、むしろ的外れな決めつけなどしようものなら(例えば厳しい子供時代を過ごしてきた人に対して)、逆鱗に触れて、その後、会話、議論も一切成立しなくなることでしょう。


根性論や精神論で諭してみてもほぼ徒労に終わることでしょう。根性論や精神論で克服することが出来る問題であるならば、ここまでこの心の問題が長期化しやすい傾向にあることはまずないでしょう。

強迫性障害の人はもともと罪悪感を極度に感じやすい性格であることを念頭に置く必要があります

悪いと自分でも感じていることを指摘されると人間関係は成立しなくなる

広義の意味も含め罪悪感を感じやすいからこそ、加害恐怖、確認強迫、潔癖症(洗浄強迫)、疾病恐怖、神罰(仏罰)強迫、儀式強迫等の強迫観念に彼ら、彼女らは1日中+1年365日、苦しめられる地獄のような日々を朝から晩まで送っているわけです。

罪悪感を異常なほど感じやすい人に上から目線で説教するのはスマートなやり方ではなく、逆効果になりえます。

 

よって、周囲のサポート者はそれよりも、
強迫性障害が脳によって生み出されていることを腹の底から理解し、その問題を解決するための方法(当ブログに書かれているような)を模索することが真の意味での解決策になりえることを把握すること。

 

それが極めて重要なこの問題への向き合い方、及び克服方法となります。

コラム:厳しい家庭教育を受けてきた私の同期
コラム: 例えば、私の自衛隊時代の同僚に上官の前に来るとガタガタと震える人がいました。

上官が来るとガタガタと異常と思えるほど震えるのです。彼の状態は蛇ににらまれたカエル以上に酷い様相でした。

その人は「強迫性障害と対人恐怖症に苦しんでいた」と私に話していました。その後、上の人間と話していて聞いたことですが、その人は自分の父親から酷い虐待を受けて育ってきたそうで、上官が父親の姿に重なるため、上官の前でそのような振戦(身体の震えのこと)が起こるのだと本人が相談したと言います。

また、私の同期に酷いどもりを抱える男がいました。この男は、誰に対しても異様なほどの敬語を使い、そのレベルは不信と思えるほどでした。
ある時、彼が自分の親に電話をかけていたのですが、親に対しても異常に丁寧な敬語で話していました。たまたまつけたTV番組でいじめがどうのこうのやっていましたが、彼はある時、こう言いました。

「こんなん。ぬるすぎっスよ」

その後、彼が続けたことは凄惨ですので、あえてこの場には記述しません。

さらに言うと、彼は風呂に入ることができないという強迫性障害の症状(潔癖症、疾病恐怖)を抱えていました。
営内での風呂は基本的に駐屯地内の大衆浴場を利用するのですが、他の人が入った浴場等には汚くて入れないと悩んでいました。
そのため、彼は別室のシャワーのみで体を洗っていました。

しかしながら、これはあくまでも教育隊での話で、その後、部隊配属後、それらの症状いわゆる強迫性障害を完治したと今では言っています。運動を毎日行うことがその完治の決め手になったと私に言っていました。

これら両者の私の同期の事例からもわかる通り、彼らが親から受けた教育は甘やかしとは対極的なものです。親が子供を甘やかしたり、わがままを通したから強迫性障害になるわけではないわけです。(既報した他国の早期自立社会実験からも傍証になりえます)

結論

強迫性障害になるのは甘えやわがままが強いという意見が正しいとは一概には言えません。
これは「一人っ子だから甘やかされた」という世間の安直なレッテル貼りと共通するところがあります。

ただし、強迫性障害の人の親は過干渉の傾向にはある場合は多いかとは思います。
というのも、強迫性障害は遺伝しやすいモノだからであり、強迫性障害の子供には強迫性障害の(或いは強迫性障害的いわゆる完璧主義的な)親が存在する*ことは少なくありません。

(*私はすべてのケースでそうであると主張しているわけではない点はご留意ください。あくまでも傾向論となります)

(関連記事:)
強迫性障害は”親のせい”なのだろうか?
強迫性障害になるのは幼少期に原因があるのか?

追記:過干渉と甘やかしはイコールではない。過干渉は強迫性障害の方の家庭に良くあることである

しかし、過干渉と甘やかしはイコールではないのは皆様ご存知の通りです。
例えば、善意の虐待という用語がありますが、過干渉はともすれば善意の虐待になりかねない非常にリスキーな所為なのです。

(善意の虐待は甘やかしやわがままを助長する教育とは、完全に対極に存在することは誰しも容易に理解できることと思います)

さらに言うと、甘やかしが教育上、子供のメンタルを弱くするという社会的通年が本邦において存在しておりますが、イタリア、スペイン、ポルトガル、フランス等のラテン語圏さらに言えば英語圏等の子供でさえ全て成人後、メンタルの弱い人間的な脆弱な大人になっているはずです。

彼らは日本人から見れば極度のマザコンと判断される所為を大人になっても平気で取っています。
例えば、自分の母親に「I miss you,Mom!」などと成人した社会人男性が平気で電話をかけています。しかし、私の経験上、これら西洋圏の男性はメンタル的に日本人男性よりも遥かに強い*です。

(*人種の違いはこの場では置いておきます)

一概に甘やかしが子供をダメにするとは限らないわけです。(イスラエルで行われた早期自立実験はメンタル不安定で他人と密接な関係性を結べない大人を大量増産して失敗に終わりました)

ですから、「親の甘やかしのせいで〇〇になった」等という市井で良く耳にする話は合理的ではないと把握することが重要で、同時に甘やかされるとスポイルされるという極めて常識的レトリックも疑ってかかった方が良いくらいだと思います。

問題は「甘やかされる、甘やかされていない云々ではなく、親の本当の意味での子供への愛情が存在するかどうか」が、むしろ肝要であると私は考えております。

強迫性障害は自力で克服可能です。

当ブログ記事が強迫性障害で苦しむ方のその克服のために、少しでも参考になりますと幸いに存じます。

強迫性障害を自力で克服 (←ブログ記事一覧へ戻る)

(参考文献:)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33364515/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9023445/