強迫性障害とワーキングメモリ(作業記憶)の関係【重要】

(最終更新日:2022/01/04)

ワーキングメモリとは自分の集中したいことに自分の意識を恣意的に集中させる能力に密接に関わる脳の一時的記憶を貯蔵する機能のことです。
簡単に説明すると”脳のメモ帳機能のようなもの”です。

強迫性障害の人ではこのワーキングメモリ(作業記憶)の機能が低下しているということが学術的に報告されています。[1]

ワーキングメモリの機能の具体例

 

例えば、「自分の家の2階に本を取りに行こう」とあなたがします。その時、あなたは頭の中に「○○という本を取りに行こう」と脳のメモ帳(ワーキングメモリ)に書き込みをしています。
(意識するしないに関わらず)

そして、あなたは階段を上りながら本を取りに行くという記憶を忘れずに、実際に2階に行き、無事、2階からその本をとってくることができるのです。

 

少しわかりづらい方は以下の説明をお読みください。↓↓↓↓↓↓↓↓

しかし、
ワーキングメモリが極度に機能低下した状態ですと、
2階に置いてある本を取りに行こうと思って階段を上って、2階に行ったはいいが、「何をしに2階に来たのかわからない」といようなことが起きてしまう
のです。

傍から見れば喜劇のようで滑稽ですが、専門にはこのような状態を実行機能障害と形容し、実行機能障害にはワーキングメモリの機能低下が密接に関与します。

ワーキングメモリが機能低下すると以下のような症状が現出します

【ワーキングメモリが低下すると起きること】

 

●ワーキングメモリが低下していると、自分にとって不快な情報、感覚をすべて拾ってきてしまいます。
逆にワーキングメモリの機能が正常であると、自分にとって不要な情報をより容易に遮断することができるようになります。

ワーキングメモリが機能低下すると、気持ちの切り替えや頭の回転が遅くなります。一般的に、強迫性障害のような人の場合、ワーキングメモリの機能が低下しているケースが非常に多いと報告されています。
気持ちの切り替え、頭の切り替えが下手だからこそ、強迫観念に捉われるわけです。

ワーキングメモリが低下すると、集中力に支障をきたします。ですので、例えば、誰しも自分の視界に自分の鼻の頭が映っていますが、ワーキングメモリの機能が著しく低下した人では、自分の視界に映る”鼻の頭という不要な情報”までも拾ってきてしまい、鼻の頭が常に気になり、よって物事に集中することが困難になります。
あるいは、雑音や人の視線が気になり集中できない、ということも起きがちになります。

ワーキングメモリが低下している人ではこのように集中する能力が非常に弱体化してしまっており、集中力が弱いということは、感情のコントロールも不得手ということを暗に意味します。
(集中力が感情をコントロールする力です)

●ワーキングメモリに問題を抱えると、さらには文脈の理解、把握能力が落ちるので、このタイプの人では学生時代に数学や国語等の暗記力ではなく、思考力が試されるいわゆる応用問題を不得手にする傾向にあります。
逆に、ワーキングメモリの機能が高まると、こういった問題を躊躇なくスラスラ解けるようになります。

●ワーキングメモリが低下すると、同時に複数のことを行うマルチタスク能力が低下します。

●ワーキングメモリが低下すると、物事を即断する能力、行動力に支障が発生します。
したがって、気持ちの切り替えの問題も発生します。

注意力が分散してしまうので仕事上のケアレスミスが非常に多くなります。

 


↑本記事を解説しました。

逆にワーキングメモリの機能が強化されると、どうなるか?

実際に、ワーキングメモリの機能を強化する方法を取ってから、私自身、感情的になることもなくなり、常に物事に対してより冷静でいられるようになりました。

以前は、結果を推測せずに行動し、他人とすぐに口論になって困っていましたが、今はそのようになることはなくより常時よりスマートでいられる感じです。

物事の記憶、習得も格段と早くなったことも実感しています。

 

このように、ワーキングメモリーの機能が強化されると思考、感情の切り替えが”明確に”迅速化するわけです。

 

悪い面としては性格的な純粋さがなくなり、物事に打算的になったということはあります。

(トロッコ問題のような心理実験を素直に受けると、感情に流されづらいので、自分に都合の良い決断をする)

 

強迫性障害にワーキングメモリが関わるのは確かだが、そこまで気にする必要はない


強迫性障害の人の脳で起きているワーキングメモリの機能自体は脳の障害というほど大きな問題ではなく、ワーキングメモリに関わる脳部位(前頭葉、前部帯状回等)は可塑性に富んでいるので、より
容易に強化することが可能です。

 

繰り返しになりますが、

 

「気持ちの切り替えが遅い」=「ある考えに強迫的にとらわれる」ということはワーキングメモリの機能低下から惹起されている蓋然性が極めて濃厚です。

 

思考、考えを無理なくスパスパ流すことができていれば、強迫観念に捕捉されることなど起きようがないためです。

過去の私は嫌なことがあると数か月でも半年でもそのことをずっと忘れずに、そのことで怒ったり、気に病んでいましたが、今では最悪レベルの出来事が起きても、長くてもほとんどが半日以内、長くても数日以内には寝て起きたら忘れ、その後は、どうでもいいとしか思えない状態となっております。

ワーキングメモリを強化する方法

ワーキングメモリを強化するには、

 

〇高強度インターバル運動(ダッシュとゆっくりジョギングを交互に繰り返す)

下半身の筋肉を鍛える筋トレ(下半身の筋肉を鍛えると最も効率的にBDNFという脳内の最も重要な神経栄養因子の分泌を促すことが可能になり、BDNFの上昇はワーキングメモリーの機能を強力に強化する)

〇マインドフルネス瞑想(座禅、瞑想またはハタヨガのような動的瞑想)

ゲーム性(ルール)のあるスポーツ(例えばサッカー、バスケ等の球技)

〇囲碁や将棋、チェス等の知的スポーツ

数学、物理、言語の学習

ピアノ、ギター、ドラム等のマルチタスクが要求される楽器の演奏

極度の集中力が要求される(≒他人の心を読む必要がある)ビデオゲーム(FPS、格闘ゲーム(対人戦)等)

 

などが有効です。

また、当然ながら
サプリメントやクスリの摂取も非常に効果的です。

(関連記事:)
強迫性障害を運動で克服【まとめ】
強迫性障害を瞑想で克服する方法

強迫性障害に効果的なサプリメント(超まとめ)

巷で言われるN-back課題(下記動画)ですとか、記憶の再現法なども一定の効果はあります。

N-back課題はアプリ(携帯およびPC)があるので訓練してみると良いでしょう。
(やってみるとわかるかと思いますが、N-back課題が効果がないというのはデマです。ものすごく集中力を要求されます)

話をまとめますが、

さいわいワーキングメモリに密接に関わる前頭葉、前部帯状回は他の脳部位とは異なり可塑性(かそせい)に富んでいるので、鍛えることがより容易に可能なのです。

 

初級者に対し最もワーキングメモリーを鍛えるの最も効果的なモノは体を動かす(筋肉を使う)運動だという実感を私は持っております。(上級者には瞑想が最も効果がある)

 

強迫性障害で悩んでいる人はぜひその強化法を試されてみてください。
克服もよりスムーズに行くようになるはずです。

強迫性障害を自力で克服 (←ブログ記事一覧へ戻る)

(参考文献:)
[1]:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022395608002458

(Visited 6,918 times, 1 visits today)

関連記事:

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です