強迫性障害とADHDが併発しやすい”明確な”理由
強迫性障害とADHDは併発しやすい傾向にあります。
(私は過去にADHDと診断されたことがありますが、同時に深刻な強迫性障害が存在していました)
強迫性障害を持つ方にはADHD/ADDが併発することが少なくありません。
この記事を読むことで、
両者の共通項を丹念に鑑(かんが)みていけば、「当たり前だ」とより多くの方が納得頂けることと思います。
強迫性障害とADHDが併発しやすい至極明確な理由
Contents
強迫性障害とは
強迫性障害とは自分の嫌な考えや思考に四六時中憑りつかれて日常生活に支障を出す症状を主に指します。
主な症状としては強迫観念、強迫行為の2つが存在します。
具体的にはあまりにもこだわり(強迫観念)が強すぎて、極めて些細なことが気になり、例えば仕事に行くのに家の鍵をちゃんと閉めたか気になって仕事場から家に帰宅する行為を繰り返す方もおります。
ADHDとは
ADHDとは注意欠陥多動性障害が邦訳で、集中力を著しく欠き、一つの物事に注意を向け続けることが困難な状態を指します。
ADHDの方では気持ちや興味が変転しやすく、著しく計画性を欠いた行動が見られ、場当たり的な人生になりやすいという特徴を持ちます。
強迫性障害とADHDが併発しやすい明確な理由とは?
強迫性障害にせよADHDにせよワーキングメモリに共通した問題を抱えております。
ワーキングメモリとは作業記憶とも呼ばれることのある短期記憶の一種です。
ワーキングメモリとは
簡単に下記の文章で卑近な例をあげ、このワーキングメモリの機能を説明致します。
例えば、あなたが今からコンビニでティッシュと弁当とスナック菓子を買いに行こうと思ったとします。そして、車を運転し、コンビニに着きました。そして、コンビニに入り、ティッシュと弁当とスナック菓子を買って車に乗って家に戻りました。
この時、あなたは自宅から車を運転しながら「ティッシュと弁当とスナック菓子をコンビニで買う」という記憶をワーキングメモリ(脳のメモ帳)上に書き込んで、それを維持しながらコンビニに向かったわけです。
そして、無事コンビニにて上述した商品を購入することができました。
車の運転をしながらティッシュと弁当、スナック菓子をコンビニで買うという記憶(ワーキングメモリ)を維持して、コンビニにあなたは向かったわけです。
ここで、ワーキングメモリに問題を抱えていると、どのようなことが起こるのでしょうか?
それは、車を運転し、コンビニに向かったのはいいが、「何を買いに来たのかわからなくなる」という現象が発生するのです。
強迫性障害やADHDの方ではこのワーキングメモリの容量が一般人よりも小さい傾向にあり、ド忘れを起こしやすいという共通的傾向にあります。
極めて深刻なワーキングメモリの問題を抱えた方では社会生活をまともに遅れなくなることもあります。
ワーキングメモリとは脳のメモ帳
ワーキングメモリとは脳のメモ帳と形容することができます。(他にも集中力、気持ちや思考の切り替え能力に密接に関わりますが単純化するためこの場では主に脳のメモ帳としての機能を解説します)
ワーキングメモリを脳のメモ帳であると表現した方が、ただ単にワーキングメモリというよりも遥かにわかりやすいはずです。
上記のコンビニへ買いたいものを向かった例に照らし合わせて再度ここで説明すると以下のようになります。
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“脳のメモ帳であるワーキングメモリにコンビニで、ティッシュとビールと弁当を買いに行くというタスクを書き込んで(メモして)、車の運転をしながら、コンビニに到着し、コンビニで、ド忘れすることなく、無事、ティッシュとビールと弁当を買うことができた”
この脳のメモ帳の容量が大きければ多い程、あれもこれもそれもこれもあれも・・・・・・という風に、より多くのことを何も実際の紙面のメモ帳にメモをしなくても例えばスーパーやコンビニ行って、ド忘れすることなく購入することができるわけです。
講演会等の公の場で高いパフォーマンスを披歴できる人はワーキングメモリの機能がかなり優秀な方である可能性が高いと言えます。
逆に、
講演会のようなミスが許されない場で事前に準備した文章を棒読みするような方の場合、ワーキングメモリの機能が低い可能性があります。
話を元に戻しますが、
「この脳のメモ帳の容量が小さい人は、先のコンビニの事例では、ド忘れし買いそびれて帰宅してしまう」というような事象が発生しやすくなります。
逆に、
この脳のメモ帳の容量が大きい人は何もド忘れすることなく、あれもこれもそれもこれも完璧に購入して(例えば十数件の商品を紙面にメモもせずに)帰宅できてしまいます。
強迫性障害とADHDの共通項:
強迫性障害
強迫性障害の方はワーキングメモリに問題を抱えており、そのため注意集中力に深刻な問題を抱えていることがわかっています。
既報の通り、
ワーキングメモリは気持ちや思考の切り替えにも密接に関わっており、強迫性障害の方がいつまでたっても一つの強迫観念にとらわれ続けたり、ひとつの強迫行為から脱することができないのはこのワーキングメモリの機能低下に依るものであると断定することができます。
実際に強迫性障害の方ではワーキングメモリの機能低下が散見されるという旨の論文は多数存在しています。
(参考:)
・https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022395608002458
・https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0005791604000965
上記2つの論文は被引用数が上から147件、298件です。
百、数百と引用されている論文は高く評価された論文であると一般論としては見なされるので、信ぴょう性はかなり高いと言えます。
ADHD
ADHDの方はワーキングメモリに明確な問題を抱えております。
そもそもこのワーキングメモリの問題が明るみに出たのは、このADHD(注意欠陥多動性障害)/ADD(注意欠陥障害)に関する研究によってであったと言っても過言ではありません。
注意力や衝動のコントロールに必須な機能がワーキングメモリですので、この機能に字義通りの問題を抱えているのがADHDやADDの人々なのです。
(参考:)
・https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1076/jcen.24.6.781.8395
・https://link.springer.com/article/10.1007/s10802-008-9215-y
上の論文は被引用数は1629件で、下の論文は374件です。
上の論文はADHD/ADDの子供のワーキングメモリはトレーニングにより改善できるといった趣旨の内容ですが、被引用数が千件を軽く超えておりますので、「如何にワーキングメモリの問題がADHDにおいて世界中で叫ばれてきたか」このことは如実に、そして同時に、暗に語っていることと思います。
まとめ
このように、強迫性障害とADHDが併発しやすいことは、両者はワーキングメモリの機能が低下しているという共通項を持っていることからより容易に理解することができます。
したがって、ワーキングメモリの機能低下という共通項にフォーカスしていけば、「両者が併発しやすい傾向にあるということは至極当然である」と多くの方は納得できる筈です。
さらに言えば、もともとADHDの素因を持っていた人が何らかの生活的社会的ストレスにより二次障害として強迫性障害を発症するという例も報告されております。過去の私などはこの事例であったのだと考えられます。
最期に、参考までに申し上げますが、ワーキングメモリを司る前部帯状回や外側前頭皮質は可塑性(≒訓練により変わる力)に富んでおりますので、トレーニングによって強化することがより容易です。
複数の情報の処理が求められる武道やスポーツ、楽器演奏等はワーキングメモリのトレーニングにうってつけだと言えます。
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